エピジェネティクスとGADV仮説?

質問の人
近年、遺伝子のスイッチを着目する「エピジェネティクス」が研究されています。その中で、「エピジェネティックな目印には、DNAにつく目印(DNAメチル化)とヒストンにつく目印(ヒストン修飾)の2つが知られている」とあります。ヒストンがタンパク質であり、そこにDNAが巻き付いている点、DNAメチル化がCpG配列のCに認められる点は、始めにタンパク質ありきというGADV仮説、およびGNC-SNS原始遺伝暗号仮説と何か呼応しているようにも感じられますがいかがでしょうか?
質問の人
また、エピジェネティックな情報を通して後天的な獲得形質が遺伝するという可能性については、セントラルドグマを逆方向に進む、すなわちタンパク質からDNAへの流れを表しているかもしれません。これもまたGADV仮説に符合し、原初的な進化の過程においてはむしろタンパク質からDNAへの伝搬が「ノーマルなフロー」であることを示してはいないでしょうか?
WIRED.jp

DNAという「生命の設計図」に書き込まれた遺伝子は、環境や生活習慣によって変化することが近年の研究でわかっている。「エピ…

DNAのメチル化やヒストンのメチル化やアセチル化(ヒストン修飾)が見られたからといって、必ずしも、『初めにタンパク質ありき』とは言えません。なぜなら、それらの化学修飾を行う酵素はDNAの遺伝情報に書き込まれたタンパク質だからです。また、ヒストンがタンパク質であり、そこにDNAが巻き付いていることをもって、GADV仮説、およびGNC-SNS原始遺伝暗号仮説と関係しているとは言えないと考えています。

また、エピジェネティックス(後生的な制御)が『タンパク質からDNAへの流れを表している』わけではないと思います。なぜなら、もしも、『タンパク質からDNAへの流れを表している』と考える場合、『タンパク質のアミノ酸配列がDNAの塩基配列に移されている』ことを確認する必要があるからです。しかし、エピジェネティックスは上で書かれているように、DNAのメチル化やヒストンのメチル化やアセチル化(ヒストン修飾)よって行われている制御です。そのため、『タンパク質からDNAへの流れを表している』わけではないと考えられるからです。

そのようなエピジェネティックスとは無関係に、私は、GADV仮説を主張し、RNAワールドが成立しないと考えています。その根拠にはいくつかあるのですが、その最も重要な点は、ある特定のタンパク質を合成するための遺伝情報(タンパク質のアミノ酸配列を決める情報)をDNA(または、RNA)上に書き込むには、アミノ酸をランダムにつないでも水溶性で球状のタンパク質を合成できるタンパク質の0次構造(4種の[GADV]-アミノ酸などの特別なアミノ酸組成)の下で合成される未熟タンパク質から始め、未熟タンパク質を成熟化させる過程を経ることが必要だということです。このことは、遺伝情報を持つDNA(または、RNA)を生み出すには未熟なタンパク質が必要なこと、すなわち、遺伝子を生み出すには(未熟)タンパク質が先に存在することが必要なことであり、RNAワールド仮説は成立しないことを意味しています。このようなことにつきましても詳しくは、最近(2021年)、SpringerNatureから出版された私の英文著書:タイトルは、”Towards Revealing the Origin of Life -Presenting the GADV hypothesis”の中の第3章:The Origin of Proteinまたは第8章:The Origin of Geneに書いていますので、それらをご覧ください。

(2021年8月12日更新)