原始地球上の水たまりの中でGADVの4種類のアミノ酸だけから球状のタンパク質が作られる環境があるかと言いますとそれは困難です。なぜなら、アミンやカルボン酸、GADVアミノ酸以外のアミノ酸も原始地球上に存在すると考えられるからです。
しかし、アミノ酸は側鎖に負電荷(カルボキシ基)と正電荷(アミノ基)を持つ有機化合物です。したがって、GADVアミノ酸が蒸発と(水添加後)乾涸を繰り返す中でペプチド結合を形成しながら、オリゴペプチドを形成できるのは一つの分子内に正と負の電荷をもつアミノ酸だけということになります。
だとしても、ご質問のように、問題はGADVアミノ酸だけが重合できる環境があるかどうかですが、量的に多い順に並べますと、グリシン、アラニン、2-アミノ酪酸、セリン(ただし、セリンは不安定なので原始地球上に蓄積する量は少なくなっている可能性が考えられます)、アスパラギン酸、バリンのような順になるかと思います。
したがって、GADVアミノ酸の中ではバリンの含有量が少なくなる可能性が考えられるのですが、バリンを含むペプチドが水中で集合する際には、バリンの大きな疎水性のために、バリンを含むペプチドが高い確率で集合することになります。このようにしてバリンの不足をカバーできると考えています。
それでも、2-アミノ酪酸が含まれるなどしますので、GADVアミノ酸だけが重合したペプチドができるわけでなく、その意味では他のアミノ酸等を含んだ不完全なGADVペプチドしかできません(それでも大部分は、GADVアミノ酸でできたペプチドの集合体が形成されると考えられます)。
この不完全なGADVペプチド集合体をより純粋な、したがって、より高い機能を持ったGADVペプチド集合体([GADV]-タンパク質)を合成する仕組みを獲得するためにGADVアミノ酸をコードするGNC原初遺伝暗号が形成され、さらには、GADVアミノ酸をコードする(GNC)n遺伝子が形成されたと考えているのです(ただ、実際には、GADVアミノ酸をコードするGNC原初遺伝暗号を形成し、さらには、GADVアミノ酸をコードする(GNC)n遺伝子を形成したものが、他のものよりも高い確率で選択されることによって、GNC原初遺伝暗号、(GNC)n遺伝子を獲得した生命体が生まれたという方が実際に近いのですが。