セリンのほうがより簡単なアミノ酸なのに、何故GADVなのですか?

 
質問の人
セリン(Serine、Ser、2-アミノ-3-ヒドロキシプロピオン酸)はアミノ酸の中では比較的簡単な構造をもっていると聞きました。
まずは簡単なアミノ酸から初期のタンパク質には使用されていくだろうということは想像に難くなく、それならGADVの中にS(セリン)が含まれていないのはおかしいのではないでしょうか?

確かに、セリンはアスパラギン酸やバリンよりも構造の簡単なアミノ酸ですし、原始地球でも合成されていたに違いないアミノ酸の一つです。なのに、GADV の中にセリンが使われていないのは、不思議に思われるかもしれません。その理由として、私は以下のように考えています。
セリンは、グリシンと同様、ターン/コイル形成アミノ酸です。そのため、構造の簡単なものから順に4つのアミノ酸を使用したとしますと、Gly, Ala, Ser そして Asp となります。しかし、Gly と Ser が共にターン/コイル形成アミノ酸であり、同じような働きを持つアミノ酸が重複することになります。その上、β-シート形成アミノ酸である Val が含まれなくなり、タンパク質の構造形成にとって不都合が生じます。そんなこともあり、最初の4つのアミノ酸としては、Ser よりも構造が簡単で原始地球に大量に存在した Gly を使い、Ser の代わりに Val を使ったので、GADV の4つが選択されたのです。
なお、Ser は現在、タンパク質を構成する20種のアミノ酸の一つとして使用されていますが、それはSer の持つOH 基の重要さのために後になって、Ser が使用され、今日に至っていると私は考えています。