「生命の起源および進化学会」第44回学術講演会

「生命の起源および進化学会」第44回学術講演会が、3月18日~20日で、国立天文台・三鷹キャンパスにおいて開催されました。

池原健二氏は、「tRNAの起源ーアンチコドンステムループ仮説 (The Origin of tRNA-Anticodon stem-loop hypothesis-)と題して講演しました。tRNAの起源に関する研究が進んできたことは、生命の起源に関する研究のステップアップにつながることと思います。また、セッション4での座長もしました。セッション4では、「GADVアミノ酸セットにグルタミン酸が加わることによる構造生物学的意味」という講演もありました。残念ながら、まだまだRNAワールド的研究として、リボザイムにとらわれている研究が多いようです。

シンポジウムは、JAMSTECの高井研氏がコンビーナーで、「今、そこにあるアストロバイオロジー」と題して行われました。アストロバイオロジーセンターができて、その盛り上げということも含めて、4つの講演とパネルディスカッションが行われました。講演は、小松勇氏「前生物的な化学反応の理論的解明」、鈴木大輝氏「隕石/彗星が初期地球にもたらした宇宙由来有機分子の生存率」、菊池早希子氏「初期火星におけるハビタビリテイ」、藤島晧介氏「アストロバイオロジー研究の新提案」でした。

しかし、アストロバイオロジーの目的が、地球外惑星に、生命物質(有機物や水、場合によってはバクテリアなど)の探索を行うことがメインのようで、地球こそが宇宙の中で、生命誕生に適していて、そこで生物が進化してきたことを無視しているように思えます。RNAワールド仮説による生命の起源研究の行き詰まりを打開できず、仕方なく地球外に希望をもとうとしているようです。セントラルドグマ形成の過程、代謝の起源、細胞の起源を真剣に考えるのであれば、池原健二氏の提唱する「GADV仮説」を中心に「tRNAの起源」、「代謝の起源」、「細胞の起源」を理論的にも実験的にも検証していくことが必要でしょう。