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GADVのアミノ酸の自然発生性は? 3


「GADVのアミノ酸は、比較的簡単な構造とされるが、自然発生的に本当に発生し得るものなのか?」

Gly, Ala, Asp そして、Val のいわゆる [GADV]-アミノ酸は比較的構造が簡単で、自然発生的に、言い換えれば原始地球環境を模擬した前生物学的(非酵素的)合成実験で容易に合成できることが多くの研究者の実験によって確かめられています。また、炭素隕石に含まれるアミノ酸(宇宙で自然発生的に合成されたアミノ酸)を分析した結果によっても [GADV]-アミノ酸が多くの隕石中に含まれていることが分っています(Van der Gulik et al., (1))。

ただ一方で、面白いことに天然の 20 種のアミノ酸は、前生物学的(非酵素的)容易に合成できるアミノ酸を順番に使用しているのではありません。その代表的なものが、側鎖にエチル基を持つ2-アミノ酪酸(2-AB)です。この 2-AB を天然のアミノ酸として使用していない理由については次のように説明することができます(池原の考え)。

  1.  β-炭素に分枝構造を持たない疎水性アミノ酸はα-へリックス形成アミノ酸となります(α-へリックス形成アミノ酸と β-シート形成アミノ酸の特徴を比べると良く分ります)。
  2. この 2-AB を G, A, 2-AB, D のように合成されやすいものから順に使用したとしますと、Ala と 2-AB が共に α-へリックス形成アミノ酸となり、α-へリックス形成アミノ酸が重複する一方で、4 種のアミノ酸の中に β-シート形成アミノ酸が含まれないことになります。

そのため、4 種のアミノ酸として、[GAD]-アミノ酸と 2-AB を使用せず、Val の蓄積を待って[GADV]-アミノ酸を使用したのです。 即ち、G, A, 2-AB, D の 4 種アミノ酸を使用した生物が誕生したとしても、[GADV]-アミノ酸を使用した最初の生命体の方が [GAD, 2-AB] の 4 種のアミノ酸を使用した生物よりも、生存する上での能力が高く([GADV]-タンパク質の方が [GAD,2-AB]-タンパク質よりもタンパク質機能が高く)、[GADV]-タンパク質を使用した生命体を祖先とする生物が現在の地球生物として繁栄しているのだと考えて説明できるのです。

(1)  Van der Gulik, Massar, S., Gilis, D., Buhrman, H. and Rooman, M. (2009) The First Peptides: the evolutionary transition between prebiotic amino acids and early proteins. J. Theor. Biol. 261: 531-539.



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3 thoughts on “GADVのアミノ酸の自然発生性は?

  • K.Y.

    生物学は楽しいですね。大学時代に勉強したことを思い出します。ところで、

    >2-AB を天然のアミノ酸として使用していない理由

    についてですが、確かに、G, A, 2-AB, D の 4 種アミノ酸を使用した生物よりも、G, A, D, Vの4種のアミノ酸を使用した生物が有利だったという説明は説得力があります。しかし、これは、遺伝情報としてのRNAの保持と、RNA情報からのタンパク質への翻訳(原初の翻訳ではGNC配列を用いたため使用するアミノ酸の数を4つ以内に抑える必要があった)という前提を踏まえたものです。

    「直接的でランダムなペプチド結合(2013.5.19記事)」で生成された原初のタンパク質が、ポリヌクレオチドの生成を触媒したことをRNAの起源というストーリーを考えると、この原初のタンパク質にG, A, D, V以外のアミノ酸、特にαアミノ酪酸やセリン、グルタミン酸といった比較的簡単に生成されてしまうアミノ酸が「偶然」含まれていなかったとは考えづらいのではないでしょうか?

    逆に、これらのアミノ酸が含まれていたとしても、ポリヌクレオチドを生成する活性が得られないとは思えません。最初にポリヌクレオチドの生成を触媒したタンパク質にはαアミノ酪酸どころか、ノルバリンやβアラニンなど、原生生物の作る酵素には含まれないようなアミノ酸も多数含まれていた、と考える方がよほど自然のように感じます。

    とはいえ、原始的なRNAによってコードされたタンパク質はG, A, D, Vのたった4種から成り立っていたという仮説自体は、魅力的です。コドン対照表を見る限り、この4種のコードから拡張されたものだと考えるのは美しさがありますし、なにより、GxCGxCGxCという配列で繰り返し登場するCGをメチル化することで簡単に制御をかけることができるようにも思えるからです。

    つまるところ、①原初のタンパク質→②ポリヌクレオチド→③コードされたタンパク質という流れにあって、①と③は構成要素(アミノ酸)が同じというだけで、特段、系統的なつながりは無いわけです。つきつめてしまえば、①はアミノ酸の重合体である必要すらなく、ポリヌクレオチドの生成を触媒する分子であって、自発的に生成可能なものであれば何でも良いということにさえなります。

    RNAワールド仮説を採るとしても、ポリヌクレオチドが自発的に生成したとは考えづらいわけで、何らかの触媒反応などが想定されるのだと思います。それを踏まえると、RNAワールド仮説とGADV仮説は、本質的に相容れないものではないように思えるのですが、いかがでしょうか。

  • 池原 健二

    池原 健二 2015年8月19日10:00 AM
    『K.Y. 様。
    GADV 仮説に関するご質問、有難うございます。私のHP「GADV タンパクワールド研究室」に対する反応があまりないこともあって、しばらく、私のHPを見ていませんでした。そんなこともあり、返事が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
     二重鍵カッコ(『』)で囲まれた部分が、ご質問等に対する私の返答です。ご覧ください。』

    生物学は楽しいですね。大学時代に勉強したことを思い出します。ところで、
    >2-AB を天然のアミノ酸として使用していない理由
    についてですが、確かに、G, A, 2-AB, D の 4 種アミノ酸を使用した生物よりも、G, A, D, Vの4種のアミノ酸を使用した生物が有利だったという説明は説得力があります。しかし、これは、遺伝情報としてのRNAの保持と、RNA情報からのタンパク質への翻訳(原初の翻訳ではGNC配列を用いたため使用するアミノ酸の数を4つ以内に抑える必要があった)という前提を踏まえたものです。
    『その通りです。言葉不足だったかもしれませんが、例えば、GNCがコードする4種のアミノ酸として、したがって、その後は天然の20種のアミノ酸の一つとして2-ABが使用されたとすると、私が解析に使っていた現存のタンパク質が持つ平均的な値を用いて設定した4種のタンパク質構造条件(疎水性/親水性度、α‐へリックス、β‐シート、ターン/コイル形成能)を満足できないことを根拠に説明したものです(したがって、K.Y. さんがお考えのように原初の翻訳ではGNC配列を用いたため使用するアミノ酸の数を4つ以内に抑える必要があったことを前提にしたものです)』
    「直接的でランダムなペプチド結合(2013.5.19記事)」で生成された原初のタンパク質が、ポリヌクレオチドの生成を触媒したことをRNAの起源というストーリーを考えると、この原初のタンパク質にG, A, D, V以外のアミノ酸、特にαアミノ酪酸やセリン、グルタミン酸といった比較的簡単に生成されてしまうアミノ酸が「偶然」含まれていなかったとは考えづらいのではないでしょうか?
    逆に、これらのアミノ酸が含まれていたとしても、ポリヌクレオチドを生成する活性が得られないとは思えません。最初にポリヌクレオチドの生成を触媒したタンパク質にはαアミノ酪酸どころか、ノルバリンやβアラニンなど、原生生物の作る酵素には含まれないようなアミノ酸も多数含まれていた、と考える方がよほど自然のように感じます。

    『はい。K.Yさんがお考えのように、確かに遺伝暗号や遺伝子が形成される以前に行われた、直接的でランダムなペプチド結合の形成によって原初のタンパク質ができていた頃のタンパク質には、G, A, D, V の4種のアミノ酸に加え、αアミノ酪酸やセリン、グルタミン酸に加え、ノルバリンやβアラニンなど、原始地球上で生成し蓄積していたアミノ酸も重合体の中に含まれていた(含まれざるを得なかった)と考えられます。
     しかし、私は、4種のタンパク質構造条件(疎水性/親水性度、α‐へリックス、β‐シート、ターン/コイル形成能)を基に考えることもあり、当然のことでもあるのですが、G,A,D,V 以外のアミノ酸が含まれる頻度が大きくなるにつれてタンパク質の機能は小さくなるとが考えています。逆に言えば、私は、GADVアミノ酸の含まれる割合が大きいタンパク質ほどタンパク質としての構造と機能が高くなること、そのことを念頭にGADV(を中心とする)タンパク質の擬似複製によって形成されたGADVタンパク質ワールドでの様々な触媒機能の働きでヌクレオチドが、そしてオリゴヌクレオチド等が合成され、GNC原初遺伝暗号の確立、(GNC)n原初遺伝子の形成を経て生命が誕生したと考えているのです。』
    とはいえ、原始的なRNAによってコードされたタンパク質はG, A, D, Vのたった4種から成り立っていたという仮説自体は、魅力的です。コドン対照表を見る限り、この4種のコードから拡張されたものだと考えるのは美しさがありますし、なにより、GxCGxCGxCという配列で繰り返し登場するCGをメチル化することで簡単に制御をかけることができるようにも思えるからです。
    『ご存知かと思いますが、私は現在の地球上でも全く新規な遺伝子やタンパク質がどのようにして生み出されているのかということを追求し、最初に、全く新規な遺伝子はGC含量の高い遺伝子のアンチセンス鎖から生み出されるという「GC-NSF(a) 新規遺伝子生成仮説」を思いつくことができました。そして、それをきっかけとして遺伝暗号の起源に関する「GNC-SNS原初遺伝暗号仮説」へ、生命の起源に関する「GADV仮説」へと進んだのです。そのため、最初の遺伝子は、GxCGxCGxCという配列であった(でなければならなかった)と考えているのです。

     そこで、逆に、私からK.Y.さんへの質問なのですが、「繰り返し登場するCGをメチル化することで簡単に制御をかけることができる」という点をもう少し説明していただけないでしょうか。その点を私にも理解でき、GADV仮説にとって有意義な点があれば(もちろん、あるように思っているのですが)、論文に書く際に引用させていただきたいのです。よろしくお願いします。』

    つまるところ、①原初のタンパク質→②ポリヌクレオチド→③コードされたタンパク質という流れにあって、①と③は構成要素(アミノ酸)が同じというだけで、特段、系統的なつながりは無いわけです。つきつめてしまえば、①はアミノ酸の重合体である必要すらなく、ポリヌクレオチドの生成を触媒する分子であって、自発的に生成可能なものであれば何でも良いということにさえなります。

    『はい。確かに、RNAを合成するためだけなら、タンパク質でなくても何でも良いのですが、上でも書きましたように、私は、GADVアミノ酸の含まれる割合が大きいタンパク質ほどタンパク質としての構造と機能が高くなること、そのことを念頭にGADVタンパク質の触媒機能を重視しています。
    また、①原初のタンパク質→②ポリヌクレオチド のように、RNAワールド仮説でも①原初のタンパク質をGADVタンパク質に置き換えて考えますと、一見、RNAワールド仮説とGADV仮説は似ているように思えるかもしれません。しかし、RNAワールド仮説では、②ポリヌクレオチドの形成以降は、RNAの自己複製によって出現した多様なRNAを含むRNAワールドの中で、遺伝子や遺伝暗号が生まれ、タンパク質を生み出し、生命が生まれたと考えているのだと思います。このように、RNAワールド仮説ではRNA触媒による自己複製と多様なRNA触媒によるタンパク質の合成を念頭に置いた考えとなっています。
    それに対して、GADV仮説では、原初のGADVタンパク質による触媒活性によって、②オリゴヌクレオチドの形成へと進み、続いて、GNC原初遺伝暗号の形成、(GNC)n遺伝子の形成へと進めた触媒としてGADVタンパク質を中心として考えている点が最大の違いです。
    また、RNAワールド仮説とGADV仮説には以下のような大きな違いもあると考えています。それは、②ポリヌクレオチドから→③タンパク質の過程をどのように考えるのか(説明するのか)の違いです。即ち、RNAワールド仮説はご存じのように遺伝子(DNA)とタンパク質の間に見られる、いわゆる「ニワトリと卵」な関係の成立を説明するために考えられたこともあって、RNAを生成できれば、そして、RNAの自己複製によって多様なRNAによって構成されるRNAワールドができる。RNAワールドができれば、RNAが遺伝子となり、翻訳系を使ってタンパク質を合成できると安易に考えているように思います。しかし、RNAが遺伝子となってタンパク質を合成するには、RNA(トリプレット配列)とアミノ酸を繋ぐ遺伝暗号が必要です。しかし、私にはRNA(恐らく、モノヌクレオチドを繋ぐことで合成されるのだと思いますが)ができたとしても、そのRNA上には多様な配列が並んでいるはずなので、最初から60種程度のトリプレットでできた遺伝暗号を準備しておく必要があると思われます。要するに(最初の)遺伝暗号の成立過程を説明することは恐らく不可能な気がしています。遺伝暗号の起源をRNAワールド仮説で説明できなければ、遺伝子の起源や遺伝子の成立を前提としたタンパク質合成の仕組み(タンパク質の起源)も説明出来ないのではと考えています。このように、RNAワールド仮説には、遺伝子や遺伝暗号、タンパク質の生成という三つの起源を説明できないという点が非常に大きな欠点があると考えているのです。』
    RNAワールド仮説を採るとしても、ポリヌクレオチドが自発的に生成したとは考えづらいわけで、何らかの触媒反応などが想定されるのだと思います。それを踏まえると、RNAワールド仮説とGADV仮説は、本質的に相容れないものではないように思えるのですが、いかがでしょうか。
    『上でお書きのお考えを含めて、大変良く考えておられます。また、最近になってRNAワールド仮説では生命の起源を説明できないのではとの機運が大きくなってきています。そんなこともあって、最近はRNAを合成する前の触媒としてペプチドやタンパク質を考える研究者も多くなってきています。
    しかし、上でも書きましたように、RNAワールド仮説ではRNAの自己複製とRNAの多様な触媒機能を重視した考えです。それに対して、GNDV仮説では、GADVタンパク質の触媒機能を一貫して使用する(RNAの触媒機能を考えない)ことで生命が誕生したと考えているのです。
    また、これも上で書きましたように、遺伝子(もちろん、ここではタンパク質のアミノ酸配列をコードするRNAのことですが)や遺伝暗号(RNAワールドからどのようにして最初の遺伝暗号が生まれたのか)、そして、タンパク質がどのように形成されたのかについて(私は、RNAワールドからどのようにしてタンパク質が生まれたのかを説明すること)説明することが困難です(恐らく、不可能な気がしています)。
    このように生命の起源を考えることの本当の意味は、遺伝子や遺伝暗号、タンパク質からなる生命の基本システムの形成(起源)を説明することだと考えているのですが、そして、繰り返しになりますが、RNAの自己複製を基礎とするRNAワールド仮説では極めて困難、いや、不可能ではと考えているのです。それに対して、GADV仮説では、GADVタンパク質ワールドでまずは、ヌクレオチドが、続いてオリゴヌクレオチドが形成され、GADVアミノ酸とGNCを含むオリゴヌクレオチドの間での立体特異的相互作用により複合体を形成することで、GNC原初遺伝暗号が成立したこと、そして、隣り合うそれら複合体内のGNCを繋ぐことで (GNC)n 遺伝子の形成へと進んだというように、GADV仮説では、遺伝暗号と遺伝子、そして、GADVタンパク質の形成を順次説明できる点が特徴の一つとなっています。そういう意味で、RNAワールド仮説とGADV仮説は本質的に異なる考えだと思っています。』

     上で私はできるだけ分かりやすくと思ったこともあり、長い文章となり、かつ、繰り返しも多くなってしまいました。そのため、かえって分かりづらくなってしまったかもしれません。そんなこともありますので、私の返答に対する質問も含め、これからも気軽に、お考えや気づかれたことなどをお伝えいただければと思います。

     本当に、色々と貴重なお考えをお寄せいただき有難うございました。

         池原 健二

  • 池原 健二

    『K.Y. 様。
    GADV 仮説に関するご質問、有難うございます。私のHP「GADV タンパクワールド研究室」に対する反応があまりないこともあって、しばらく、私のHPを見ていませんでした。そんなこともあり、返事が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
     二重鍵カッコ(『』)で囲まれた部分が、ご質問等に対する私の返答です。ご覧ください。』

    生物学は楽しいですね。大学時代に勉強したことを思い出します。ところで、
    >2-AB を天然のアミノ酸として使用していない理由
    についてですが、確かに、G, A, 2-AB, D の 4 種アミノ酸を使用した生物よりも、G, A, D, Vの4種のアミノ酸を使用した生物が有利だったという説明は説得力があります。しかし、これは、遺伝情報としてのRNAの保持と、RNA情報からのタンパク質への翻訳(原初の翻訳ではGNC配列を用いたため使用するアミノ酸の数を4つ以内に抑える必要があった)という前提を踏まえたものです。
    『その通りです。言葉不足だったかもしれませんが、例えば、GNCがコードする4種のアミノ酸として、したがって、その後は天然の20種のアミノ酸の一つとして2-ABが使用されたとすると、私が解析に使っていた現存のタンパク質が持つ平均的な値を用いて設定した4種のタンパク質構造条件(疎水性/親水性度、α‐へリックス、β‐シート、ターン/コイル形成能)を満足できないことを根拠に説明したものです(したがって、K.Y. さんがお考えのように原初の翻訳ではGNC配列を用いたため使用するアミノ酸の数を4つ以内に抑える必要があったことを前提にしたものです)』
    「直接的でランダムなペプチド結合(2013.5.19記事)」で生成された原初のタンパク質が、ポリヌクレオチドの生成を触媒したことをRNAの起源というストーリーを考えると、この原初のタンパク質にG, A, D, V以外のアミノ酸、特にαアミノ酪酸やセリン、グルタミン酸といった比較的簡単に生成されてしまうアミノ酸が「偶然」含まれていなかったとは考えづらいのではないでしょうか?
    逆に、これらのアミノ酸が含まれていたとしても、ポリヌクレオチドを生成する活性が得られないとは思えません。最初にポリヌクレオチドの生成を触媒したタンパク質にはαアミノ酪酸どころか、ノルバリンやβアラニンなど、原生生物の作る酵素には含まれないようなアミノ酸も多数含まれていた、と考える方がよほど自然のように感じます。

    『はい。K.Yさんがお考えのように、確かに遺伝暗号や遺伝子が形成される以前に行われた、直接的でランダムなペプチド結合の形成によって原初のタンパク質ができていた頃のタンパク質には、G, A, D, V の4種のアミノ酸に加え、αアミノ酪酸やセリン、グルタミン酸に加え、ノルバリンやβアラニンなど、原始地球上で生成し蓄積していたアミノ酸も重合体の中に含まれていた(含まれざるを得なかった)と考えられます。
     しかし、私は、4種のタンパク質構造条件(疎水性/親水性度、α‐へリックス、β‐シート、ターン/コイル形成能)を基に考えることもあり、当然のことでもあるのですが、G,A,D,V 以外のアミノ酸が含まれる頻度が大きくなるにつれてタンパク質の機能は小さくなるとが考えています。逆に言えば、私は、GADVアミノ酸の含まれる割合が大きいタンパク質ほどタンパク質としての構造と機能が高くなること、そのことを念頭にGADV(を中心とする)タンパク質の擬似複製によって形成されたGADVタンパク質ワールドでの様々な触媒機能の働きでヌクレオチドが、そしてオリゴヌクレオチド等が合成され、GNC原初遺伝暗号の確立、(GNC)n原初遺伝子の形成を経て生命が誕生したと考えているのです。』
    とはいえ、原始的なRNAによってコードされたタンパク質はG, A, D, Vのたった4種から成り立っていたという仮説自体は、魅力的です。コドン対照表を見る限り、この4種のコードから拡張されたものだと考えるのは美しさがありますし、なにより、GxCGxCGxCという配列で繰り返し登場するCGをメチル化することで簡単に制御をかけることができるようにも思えるからです。
    『ご存知かと思いますが、私は現在の地球上でも全く新規な遺伝子やタンパク質がどのようにして生み出されているのかということを追求し、最初に、全く新規な遺伝子はGC含量の高い遺伝子のアンチセンス鎖から生み出されるという「GC-NSF(a) 新規遺伝子生成仮説」を思いつくことができました。そして、それをきっかけとして遺伝暗号の起源に関する「GNC-SNS原初遺伝暗号仮説」へ、生命の起源に関する「GADV仮説」へと進んだのです。そのため、最初の遺伝子は、GxCGxCGxCという配列であった(でなければならなかった)と考えているのです。

     そこで、逆に、私からK.Y.さんへの質問なのですが、「繰り返し登場するCGをメチル化することで簡単に制御をかけることができる」という点をもう少し説明していただけないでしょうか。その点を私にも理解でき、GADV仮説にとって有意義な点があれば(もちろん、あるように思っているのですが)、論文に書く際に引用させていただきたいのです。よろしくお願いします。』

    つまるところ、①原初のタンパク質→②ポリヌクレオチド→③コードされたタンパク質という流れにあって、①と③は構成要素(アミノ酸)が同じというだけで、特段、系統的なつながりは無いわけです。つきつめてしまえば、①はアミノ酸の重合体である必要すらなく、ポリヌクレオチドの生成を触媒する分子であって、自発的に生成可能なものであれば何でも良いということにさえなります。

    『はい。確かに、RNAを合成するためだけなら、タンパク質でなくても何でも良いのですが、上でも書きましたように、私は、GADVアミノ酸の含まれる割合が大きいタンパク質ほどタンパク質としての構造と機能が高くなること、そのことを念頭にGADVタンパク質の触媒機能を重視しています。
    また、①原初のタンパク質→②ポリヌクレオチド のように、RNAワールド仮説でも①原初のタンパク質をGADVタンパク質に置き換えて考えますと、一見、RNAワールド仮説とGADV仮説は似ているように思えるかもしれません。しかし、RNAワールド仮説では、②ポリヌクレオチドの形成以降は、RNAの自己複製によって出現した多様なRNAを含むRNAワールドの中で、遺伝子や遺伝暗号が生まれ、タンパク質を生み出し、生命が生まれたと考えているのだと思います。このように、RNAワールド仮説ではRNA触媒による自己複製と多様なRNA触媒によるタンパク質の合成を念頭に置いた考えとなっています。
    それに対して、GADV仮説では、原初のGADVタンパク質による触媒活性によって、②オリゴヌクレオチドの形成へと進み、続いて、GNC原初遺伝暗号の形成、(GNC)n遺伝子の形成へと進めた触媒としてGADVタンパク質を中心として考えている点が最大の違いです。
    また、RNAワールド仮説とGADV仮説には以下のような大きな違いもあると考えています。それは、②ポリヌクレオチドから→③タンパク質の過程をどのように考えるのか(説明するのか)の違いです。即ち、RNAワールド仮説はご存じのように遺伝子(DNA)とタンパク質の間に見られる、いわゆる「ニワトリと卵」な関係の成立を説明するために考えられたこともあって、RNAを生成できれば、そして、RNAの自己複製によって多様なRNAによって構成されるRNAワールドができる。RNAワールドができれば、RNAが遺伝子となり、翻訳系を使ってタンパク質を合成できると安易に考えているように思います。しかし、RNAが遺伝子となってタンパク質を合成するには、RNA(トリプレット配列)とアミノ酸を繋ぐ遺伝暗号が必要です。しかし、私にはRNA(恐らく、モノヌクレオチドを繋ぐことで合成されるのだと思いますが)ができたとしても、そのRNA上には多様な配列が並んでいるはずなので、最初から60種程度のトリプレットでできた遺伝暗号を準備しておく必要があると思われます。要するに(最初の)遺伝暗号の成立過程を説明することは恐らく不可能な気がしています。遺伝暗号の起源をRNAワールド仮説で説明できなければ、遺伝子の起源や遺伝子の成立を前提としたタンパク質合成の仕組み(タンパク質の起源)も説明出来ないのではと考えています。このように、RNAワールド仮説には、遺伝子や遺伝暗号、タンパク質の生成という三つの起源を説明できないという点が非常に大きな欠点があると考えているのです。』
    RNAワールド仮説を採るとしても、ポリヌクレオチドが自発的に生成したとは考えづらいわけで、何らかの触媒反応などが想定されるのだと思います。それを踏まえると、RNAワールド仮説とGADV仮説は、本質的に相容れないものではないように思えるのですが、いかがでしょうか。
    『上でお書きのお考えを含めて、大変良く考えておられます。また、最近になってRNAワールド仮説では生命の起源を説明できないのではとの機運が大きくなってきています。そんなこともあって、最近はRNAを合成する前の触媒としてペプチドやタンパク質を考える研究者も多くなってきています。
    しかし、上でも書きましたように、RNAワールド仮説ではRNAの自己複製とRNAの多様な触媒機能を重視した考えです。それに対して、GNDV仮説では、GADVタンパク質の触媒機能を一貫して使用する(RNAの触媒機能を考えない)ことで生命が誕生したと考えているのです。
    また、これも上で書きましたように、遺伝子(もちろん、ここではタンパク質のアミノ酸配列をコードするRNAのことですが)や遺伝暗号(RNAワールドからどのようにして最初の遺伝暗号が生まれたのか)、そして、タンパク質がどのように形成されたのかについて(私は、RNAワールドからどのようにしてタンパク質が生まれたのかを説明すること)説明することが困難です(恐らく、不可能な気がしています)。
    このように生命の起源を考えることの本当の意味は、遺伝子や遺伝暗号、タンパク質からなる生命の基本システムの形成(起源)を説明することだと考えているのですが、そして、繰り返しになりますが、RNAの自己複製を基礎とするRNAワールド仮説では極めて困難、いや、不可能ではと考えているのです。それに対して、GADV仮説では、GADVタンパク質ワールドでまずは、ヌクレオチドが、続いてオリゴヌクレオチドが形成され、GADVアミノ酸とGNCを含むオリゴヌクレオチドの間での立体特異的相互作用により複合体を形成することで、GNC原初遺伝暗号が成立したこと、そして、隣り合うそれら複合体内のGNCを繋ぐことで (GNC)n 遺伝子の形成へと進んだというように、GADV仮説では、遺伝暗号と遺伝子、そして、GADVタンパク質の形成を順次説明できる点が特徴の一つとなっています。そういう意味で、RNAワールド仮説とGADV仮説は本質的に異なる考えだと思っています。』

     上で私はできるだけ分かりやすくと思ったこともあり、長い文章となり、かつ、繰り返しも多くなってしまいました。そのため、かえって分かりづらくなってしまったかもしれません。そんなこともありますので、私の返答に対する質問も含め、これからも気軽に、お考えや気づかれたことなどをお伝えいただければと思います。

     本当に、色々と貴重なお考えをお寄せいただき有難うございました。

         池原 健二